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category :Short Stories

Twitter300字ss・「新しい」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第四十一回目のお題は「新しい」です!


『新緑の季節』

 ついこの間まで寒風が吹き荒れていたというのに、気がつけば花の季節が過ぎて、木々は日毎に青さを増していく。
 遥か頭上に揺れる世界樹の枝もまた緑に染まり、陽の光を浴びて光り輝くようだ。
「いい季節になったねえ」
 裏庭に寝転がり、木漏れ日に手を伸ばせば、爽やかな風が吹き抜けていく。
「こんな日は店に篭ってないで外に出ないとね」
「そういう理由で店を閉めるな!」
 どこからともなく響いてきた怒声に、おやと顔を上げれば、板塀の向こうから覗く紺の帽子。自慢の翼を使えば塀などひとっとびだろうに、そうしないところが実に彼らしい。
「お仕事ご苦労さま~。手紙? 小包?」
「どっちもだ。さっさと店を開けやがれ、このぐうたらエルフ!」


『ライトスタッフ』

 まったくもってついていない。魔術が暴走して足を怪我したばかりか、愛用の杖まで壊してしまった。
 腕の良い魔術士ならば杖がなくとも支障ないのだろうが、いかんせん集中力に欠ける私にとって、補助道具である杖は必需品だ。仕事のためにも新調するしかない。
 馴染みの魔術道具店へ駆け込み、間に合わせでいいから、と頼み込めば、訳知り顔の店主が出してきたのは――どこからどう見てもごく普通の青年。
「杖です。あなたを支えます。どうかそばに置いて下さい」
 真顔で懇願されても困ってしまう。どういうことかと視線を投げかけるも、老獪な店主は澄まし顔で沈黙を貫いている。
「……それじゃあ、ひとまず肩を貸してもらえる?」
「よろこんで!」





『新緑の季節』

 …『垂れ耳エルフと世界樹の街』より、裏庭で昼寝するぐうたら店主と、律儀な郵便配達人の小話(^^ゞ
  「新しい」というお題を見てぱっと思いついたのが「新緑」だったので、こんなお話に。

 これはまだ、お人形ちゃんことリリル・マリルがいない頃のお話。
 オルト君は律儀なので、空を飛べば簡単に塀を越えられると分かっていても、許可なく裏庭に押し入ったりはしないのです(^^ゞ
 (鍵を渡されて店に出入り自由になるのは、約一年後のお話)

 しかし、「店に篭ってないで外に出ないと」と言いながら、裏庭に出ただけというのも、ちょっとどうかと思います(^_^;)
 余談ですが、「ユージーン骨董店」の裏庭は結構広いので、お洗濯物が干し放題です。
 まだこの頃はハンモックがなくて、故に彼は地面に直接寝転がっております……。ぐうたらにもほどがあるだろう……(*_*)


『ライトスタッフ』
 …こちらは以前ツイッターで書いた#twnovelのリメイク。
 タイトルは「Right Stuff(適任)」でもあり、「Light Staff(光の杖)」でもあり(笑)
 このあと、工房まで肩を貸してもらった魔術士は、「杖」だと主張する青年に身の回りの世話をしてもらうんじゃないかな、と(^^ゞ

Twitter300字ss・「人形」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第四十回目のお題は「人形」です!


『mannequin』

 以前から気になっていたのだ。
 時折店の前を通りかかる銀髪の美少女。レースをたっぷり使った白いワンピースにお揃いのボンネット。まるでお人形のような彼女は、ショーウィンドウの新作ドレスを眺めては、幸せそうに溜息をついたり、何やら難しい顔をして考え込んだり。
 どうせなら中に入ってじっくり見ていけばいいのに、こちらに気付くと申し訳なさそうにお辞儀をして、足早に去ってしまう。
 なので決めた。次に彼女を見かけたら――。
「ねえ、あなた!」
 背後から声をかけ、飛び上がって驚く彼女の手をぎゅっと握りしめる。
「モデルになってくれない?」
 ずっと考えていたのだ。彼女に似合う服はどんなものか。
 そう、今度は私が彼女を眺める番だ。


『雛人形』

 もう桃の節句に浮かれるような年齢ではないというのに、今年も文さんは嬉々として雛人形の飾りつけに余念がない。
 立派な七段飾りは、初孫に浮かれた祖父母がわざわざ遠方の人形問屋まで足を運んで購入したものらしい。
「出すだけでも大変だから、もういいって言ったのに」
「いいえ。一年に一度のことなのですもの、手は抜けませんわ」
 そう答えた文さんは、ふと思い出したように笑みを零す。
「そういえば、この雛飾りをお求めになった理由は、女雛が香澄さんに似ているからだったそうなのですけれど、対になる男雛の顏が良すぎると言って、大旦那様が文句をつけてらしたんですのよ」
 妙な言いがかりをつけられて、彼らもさぞ迷惑だったに違いない。





『mannequin』

 …『垂れ耳エルフと世界樹の街』より、お人形ちゃんとファッションデザイナーのお話。
 こちらは以前、Twitter上で「いいねしてくれた人を自分の創作世界のキャラにするとしたら」みたいなタグがあって、そこで三番街に住むファッションデザイナーというキャラを作らせていただいたのですが、そこで「時々、通行人を問答無用で店に連れ込んで着せ替え人形にする悪い癖がある。先日の被害者は骨董店の看板娘。」という文章を書いた時に思い描いた光景をSSに仕立ててみました。
 骨董屋の看板娘ことリリル・マリルも裁縫が得意&ファッションには拘りのあるタイプなので、あっという間に意気投合して新作ブランドを立ち上げていそうです(笑)

『雛人形』

 …こちらは『松和荘へようこそ!』より、雛人形を飾るお手伝いの文さん(地縛霊)と、現当主の香澄さん(女子大生)のお話。
 顔のいい男雛に「孫の(存在するかもわからない)未来の結婚相手」を重ねてしまった香澄さんの祖父は、雛飾りを出すたびにぶちぶちと文句を垂れては、奥さんに窘められていたのではないでしょうか(^^ゞ

 ちなみに、香澄さんと文さんが暮らしている母屋は広いので、七段飾りでも余裕で飾っておけます。
 なんなら蔵に眠る先祖代々の雛飾りも全部出して並べましょうか、と文さんは提案しているのですが、それは大変だし絵面を想像すると怖いから、と懇願してやめさせたようです(^_^;)

Twitter300字ss・「試す」

 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 2018年に入って初の300字SS。第三十九回目のお題は「試す」です!

 
『王様のお菓子』

 それは一年に一度の運試し。
 金貨入りを当てた者には幸運が訪れるという伝統のパイ菓子。それを均等に切り分けるという、極めて責任重大な役目を突如押し付けられた若き神官は、小刀を手にパイを睨む。
「らうー、はやくぅ」
 今にも涎を垂らさん勢いで急かしてくる養い子に「分かった分かった」と返事をし、ええいままよ、と小刀を振り下ろせば、刃先から伝わる鈍い手ごたえ。

「あっ」

「あー!!」
 絶叫を聞きつけて厨房から顔を出した女将は、揃いも揃ってこの世の終わりを見たような顔をしている子供達をぐるりと見渡して、あらあらと片目を瞑ってみせた。
「つまり、今年の王様はラウルさんってことね」
「えっいやそんな」
「そんなのありかよー!」



『tasting』

 ひょんなことからコンビを組むことになった相棒は、まさに『万能』だ。仕事は言うに及ばず、シャツのアイロン掛けから庭木の手入れまで、何をさせてもそつなくこなす――はずだった。
「おい。主に毒見させるってのはどういう了見だ」
「毒見とは失礼な。新作を試してみてくださいとお願いしただけではありませんか」
 ほかほかと湯気を立てている『銀色のコーヒー』を前に、稼働三十余年のアンドロイドは満面の笑みを浮かべている。
「心配なさらずとも、数値上は美味なはずです」
「お前の味覚センサーは信用できない!」
「ええ。だからあなたの味見が必要なのですよ。我が主」
 半人前のスパイと旧式アンドロイド。足してようやく一人前というわけだ。




『王様のお菓子』

 「でんたま」より、新年のお菓子を切り分けるラウルと村の子供達の図、でございます。
 「試す」というお題を見た瞬間「運試し」→「ガレット・デ・ロワ」が出てきたので、ちょっと季節外れですがこのネタで書きました。
 実はこれ、元々「第5回300字SSポストカードラリー」で「お菓子」というお題を見た時に考えていたネタだったのですが、その時はルフィーリが引き当てて女王様ぶりをいかんなく発揮する、という話で、うまくオチがつかずに没にしたのです(^^ゞ
 思いがけないところでネタをサルベージ出来て良かったです。
 
 この後、紙で作った王冠を被せられ、一日中「王様」扱いされてむず痒い思いをするラウルの姿が目に浮かびます……。事情を聞いた村長とか、それはもう恭しい態度で接してくれそうです。(そしてルフィーリはその日一日むくれて口きいてくれなさそう)

 ちなみにこの「ガレット・デ・ロワ」はフランスで公現祭(エピファニー)に食べられている伝統のお菓子で、元々はソラマメを一粒入れて焼いたパイを家族で切り分けて食べ、ソラマメが入っていた部分を引き当てた人には一年間幸運が訪れる、というものだそうです。
 最近では陶器の小さな人形を入れることがほとんどだそうですが、コインを入れるところもあるそうなので、作中では金貨にしておきました。

 しかし、本当にこういう風に「切り分けた人が当ててしまう」こともあると思うんですが、その場合はやはり、切った人に幸運がもたらされるのだろうか……。


『tasting』

 こちらは去年の「カケラ Vol.02」に出した「彼の右腕」より、『主』とアンドロイドの小話。
 アンドロイドの彼は喫茶店のマスターを長年やっていたわけですが、新しい豆や焙煎方法を試したい時は、常連さんが犠牲味見役になってたんでしょうね(^^ゞ
 味覚センサーを新しいものに載せ換えればいい話なのですが、何せ旧型のため現行のパーツと互換性がなく、フルオーダーメイドになるため、保留にしているようです。

Twitter300字ss・「贈り物」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第三十八回目のお題は「贈り物」です!
 これが2017年最後のTwitter300字ssとなります。


『聖者の贈り物』

 彼女の故郷では、冬至の夜に聖者がやってくるという。
 いい子には贈り物。悪い子にはお仕置きを。
 贈り物を待ち望む子供達は神妙な面持ちで家の手伝いに精を出す。


「この街には、そういった風習はないのですね」
 そう呟く少女は、どこか寂しげで。
 だったら何か贈って驚かせてやろうぜ、と息巻く友人の言葉に頷いたはいいものの、何を贈ればいいか見当がつかず、秘密の作戦会議は小一時間も続いている。
「人形は?」
「人形に人形やってどうすんだよ!」

「まったく……全部聞こえているのですよ」
 白熱する議論に苦笑を漏らしつつ、とっておきの茶菓子を追加する。
「二人とも、お茶が入りましたよ」
 慣れないことで頭を悩ます二人に、せめてもの労いを。 




 『垂れ耳エルフと世界樹の街』より、骨董店の片隅でひそやかな作戦会議の図、でした。

 《世界樹の街》に「クリスマス」そのものはありませんが、いくつかの街区には似たような冬の祭があるようです。
 ユージーンの暮らす十二番街やオルトの暮らす一番街にはそういったお祭りがないので、少女の語る「冬至を祝う風習」は物珍しかったのでしょう。

 素知らぬ顔でお茶を配る少女は、きっと当日まで知らぬ存ぜぬを通しつつ、二人への贈り物をこっそり準備して、お互いに驚かしあうんじゃないかなと思います(^^ゞ

Twitter300字ss・「酒」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第三十七回目のお題は「酒」です!


『大人の味』

『面白いから食わしてみな』
 そう唆されて、食後に出したのが失敗だった。
「なんだか、体がふわふわするのです~」
 アハハウフフと笑い続ける少女を前にして、どうしたもんかと溜息をつく。
「ブランデーケーキ一切れでこれだと、本物のお酒を飲んだらどうなるんだろうね、彼女」
「飲ませたら危ないな。ってか、おっさんは平気なのかよ」
「え、何が?」
 本来の標的はと言えば、顔色も変化なし、言動もいつも通り――。
「ところで、これはパン屋の髭親父の差し金だと思うけど、そうやってほいほい人の言葉に乗せられるの、君の悪い癖だよね」
 ぎょっとして店主の顔を窺えば、ああ――目が据わっている。
(こういうことか……)
「聞いてる? オルト君!」




 『垂れ耳エルフと世界樹の街』より、いつもの三人にご登場願いました。
 ユージーンは下戸の甘党だろうな、魔導人形の彼女も弱そうだな、とか思ったらこんな感じに。
 このあとひたすら、やたら饒舌に日頃思ってることをぶちまけられた挙句、翌朝になって「僕、何か言った?」とか言われそう。
 しかもぐちぐち言われた内容のほとんどが「君がいい人すぎて心配」だったりして。

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  • Author:seeds
  •  オリジナル小説サイト「星明かり亭」を運営するへっぽこモノカキ(^^ゞ
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