覆面作家企画7・Eブロック感想
2016年01月05日 公開
参加させていただいている「覆面作家企画7」、Eブロック感想など。 (またまた、推理までは至っていません……orz)
E01 会長の戸隠~高原学園生徒会記録~
…現代版「天岩戸」! 全体的に日本神話を下敷きにしているけれど、「転校生が~」という釣り文句で出てきちゃったあたりは、天照大神よりも慎重かつ仕事熱心な気がする(笑)
E02 ヒロイック・ガーリッシュ
…冒頭を読んで、うっ怖い話かと身構えたけど、強い日差しの中で色彩だけがくっきりはっきり強調されて時間は緩慢に進むような映像が浮かぶお話。
主人公が過去に負ったトラウマを、力強く照らし尽くす友人・美月ちゃんこそが、まさに光。
全体的に、地の文が一人称視点と三人称視点を行ったり来たりしてしまっているので、ここはぜひ全部一人称で突き進んでいただきたいところ。
E03 明日の行方
…見知らぬ老人との出会いで救われた青年。しかし、その老人もまた、青年に救われていた。昇りゆく朝日が「命」「希望」のように、象徴的に煌々と輝いている。最初から最後まで、きっちり映像で脳内再生できました。素晴らしい。
E04 殺人調書記録、あるいは初恋の甘い輝き
…調書という形で綴られる、事件のあらまし。いやあほんとにサイコパス……(褒めてます)。妄想もここまで行くと恐怖しかない……。そして何が怖いというのは、恐ろしいほどに身勝手な妄想の果てに殺人まで犯した人間が、自分の前夫について「気持ち悪い性癖を持ってて云々」と吐き捨てているところ。「お前が言うか!」っていう……。「すべてがおかしい」のではなく「常識的な感覚も持っているのに、一部分だけ異常なほどにおかしい」方が、よほど怖いんだなって。
E05 身代わり
…話の主人公「身代わりにされた男」は、最後まで名前すら語られないまま。
身代わりを差し出して、永遠の牢から出ることができた「暁王」は、その後どうなったのか。そこまでは語られていないけれど、エピローグの語られ方からして、恐らくは歴史の闇に消えていったのではないか。
暁王を主人公に据えて描いていたら、また全然違う話や切り口になったのだろうけれど、そこを敢えて「身代わりの男」視点で描いたことで、途方もない絶望ともの悲しさが強調されている。
光が輝くのは、闇が深い時。そんな言葉を思い出させるお話。
E06 娑婆電光クロスロード
…御伽草子を紐解くような、薄い闇の中を覗くようなお話。行き違う人の子と物の怪。だからこそタイトルがクロスロードなのか。
語り手は物の怪――かと思いきや、最後に意外な正体(?)が姿を現す。
E07 暗夜航路 Eclipse route
…冒頭から「鱗の身分証」なるワクワクする単語が出てきて、一気に世界へ引き込まれる。ファンタジーかと思いきやばっちりSF。ルルールの間延びした話し方が可愛い。情報量が詰まっていて、脳味噌からこぼれてしまう。これはもっと長い長いお話として読みたい。
E08 電子レンジ、ひかる!
…お馬鹿な叔父さんにちゃんと分かるように話している甥っ子ちゃんが生真面目でいい(笑) そして宿題の最終形態がとんでもないことになってるけど、よく読むと結構わかりやすくて面白い(笑)
E09 光の先へ
…それは人にとって救いの光なのだけれど、少女にとっては「必死に生きてきた日々を否定するもの」だった。
餓えもせず怪我もしない、満ち足りた空間でただ漫然と生きるより、闇の中を選んだ少女は、その後どうやって生きたのか。想像を掻き立てられる。
E10 彼は暗い夜雨の中に差し込んだ、一条の月の光のようだった
…とにかく脳裏に展開する情景が美しい。暗闇に咲き乱れる紫陽花。少年の真意をかなえるために、敢えて相反する道を選んだ少女。対峙する二人の表情、そのわずかな呼気までもがはっきりと感じ取れる。描かれていない結末とエンディングテロップまで見えた気がした。これは文章を超えて、すでに映像作品だ。